この胸が痛むのは
「カランも行くんだろ、俺だけ置いていくつもりか?」

「……春に結婚だろ? 新妻を3年も置いておけないだろう」


レイはリリアン・ロイズナー伯爵令嬢との結婚が決まっていて、それは冬の終わりだ。
もう半年切っている。


「お前の結婚式に出られないのが心苦しくて、申し訳ないと……」

俺だって、兄弟同然のレイの結婚式には出たかった。
だが、仕方ない。


「俺は役に立つよ! お前さえ呼んでくれたら、リリアンに延期を頼む。
 もしリリアンが駄目だと言うなら……」

「お前さ、駄目と言われるに決まっているだろ! 結婚は一生の大事だ。
 血迷うなよ?」




例えば、立太子の礼だけ出席し、一旦帰国して結婚式を挙げて。
再びロイズナー嬢を伴ってリヨンに来るのは賛成出来ない。
リヨンでは内戦は終わっていて、安全を確認して俺達は入国するが、全く危険が無いわけじゃない。

落ち着かない王宮を動き回ろうという俺達にとって、家族は弱味になる。
王太子はアグネスの事をあちらでも公にしてもいい、と言うが、バロウズにいるからと安心出来るのだろうか。
危険の可能性がある内は、彼女の側で守れないなら、まだそれは早いのではないか。


情報を得るのが早いレイは、確実に俺の戦力になってくれるし、何より居てくれるだけで心強い。
本当の自分をさらけ出せる相手は貴重だ。
それでも……


「使節団と居残りメンバーの決定はまだだな?
 リリアンと話し合うから、俺の席は絶対に残しててくれよ?」


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