この胸が痛むのは
今でもその言葉を思い出せるのに。
俺はバージニアに、妹に対して手を伸ばそうとはしなかった。
まだ幼いから、大人になれば落ち着く、と先送りにした。
言いたいことがあるのなら、聞くぞと。
どうして言わなかったのか。

妹が何をしても、何も言わないのは国王陛下だけではなく、俺も、王太子も、ギルも。
王妃陛下も同罪だ。


侯爵は何も言わず……
こんな男に愛するアグネスを預ける気にはならないよな。


王太子が部屋に戻ってきた。
3人で罰について話し合う。
納得出来た侯爵はローラ・グレイシーとは会うと言ったが、バージニアの顔は見たくもないと、吐き捨てた。


言わねばいけないと思ったのか、王太子から侯爵へそれは命じられた。
『間違ったドレスは、速やかに返却して欲しい』と。

それを黙って聞いていた侯爵は冷たい微笑みを浮かべていた。
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