この胸が痛むのは
恋多き男が落ち着けるか心配だったが、本人は
『もう充分に遊びました、これからはマルゴだけです』と言うのを信じるしかない。

フォンティーヌ女王陛下は今まで、自分を抑えていらっしゃったのか、持ち前のカリスマ性を遺憾無く発揮されるようになり、素晴らしい采配ぶりを見せた。

バロウズとの領海についても、それほどリヨンに打撃を与えるでもなく、さりとてこちらが不満に思うほどでもない、微妙な塩梅の折衷案を出してきた。
王太子からの指示と、外交官と俺の現場の空気感を併せて、最善の所に落ち着けたと自負している。

遣り甲斐のある3年だった。
最後まで『アシュ、帰るなよ』と言ってくれたのが、元ラニャンの王子で王配のクライン殿下だった。
クライン殿下とは、ラニャンの酒を飲み、歌を唄い、ラニャン女性の素晴らしさを聞かされた。
彼には母国に愛する女性が居たが、義務を受け入れ婿入りをしたと、ラニャン語で打ち明けてくれた。
『女王陛下は尊敬出来る御方だし、隣に立てる俺はラニャン王族の中では幸せな部類だ』と。


バロウズに帰国して、報告や何だかんだと終えた。
レイとカランには長めの休暇を与えて、護衛を2人だけ伴って俺はトルラキアへ向かった。

3年間アグネスとは便りをやり取りしていた。
要らない圧力は与えたくなくて、具体的な将来の事は綴らず、リヨンでの日常を知らせた。
アグネスからの手紙も同様で、祖母やアンナリーエ嬢との交流を知らせてくれていた。

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