この胸が痛むのは
彼女の本当の帰国まで、後3年。
トルラキアの貴族高等学院を卒業するのだと決めているようだ。
だが、デビュタントはバロウズで行う。
今回はそれについて打ち合わせもしたかった。
予定通り、アグネスのデビューは俺が全て整えたかった。


この日に伺います、と祖母の前伯爵夫人にも伝えていた。
歓迎をしていただき、学院から帰宅するアグネスを待つ間に、お土産を渡し、歓談する。


3年ぶりに会う15の君はもう少女ではなく、女性になっているだろう。
早く会いたい気持ちをうまく隠せて居るだろうか。

アグネスの帰宅を執事が知らせてきた。
夫人と共に迎えに出る。
馬車から降りてくるアグネスの手を取りたくて。

だが、最初に降りてきたのは男で……
その男の手を取り、アグネスが降りてきた。
彼女と同じ制服を着た若い男。

俺を見たその目は、挑むように赤く輝いていた。
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