この胸が痛むのは
「どうだ、ネネ。俺の言う通りだろ?」

自分の傍らのアグネスに、からかうように尋ねる。
その親しげな物言いに気持ちが抉られる。


「……ノイエ様、もうよろしいでしょう?
 気が済んだのなら、早々にお引き取りくださいませ」


3年ぶりに聞いたアグネスの声だった。
冷たそうに聞こえるが、それが却ってオルツォとの親密さを感じさせた。


「殿下、申し訳ございません。
 ノイエ様は少し、お人が悪いのです。
 殿下のご返答次第で、来年のデビュタントにバロウズまで来られるなんて仰って、ご冗談ばかり」

冗談? オルツォは楽しそうにしているが、全くの冗談には思えない。
俺の返答次第と言うなら、はっきりと言おう。


「そうか、なら、私もはっきり言うが。
 6年前からアグネスのパートナーを申し込んでいるので、わざわざバロウズまでお越しいただかなくても結構かと」

「……」

何だか、コイツ余裕だな。
相変わらず微笑んでいる。


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