この胸が痛むのは
冷たい言葉なのに、先生の声は優しかった。


「殿下は私には罪はないと仰るが、私にも罪はあります。
 クラリス・スローンという女性の真摯な想いを、面倒だと簡単に片付けた。
 本当に申し訳ないことをしたと思います。
 ……この痛みを、私は死ぬまで持ち続けます」


 ◇◇◇


「それとは別にアグネス嬢の症状が気になります」

俺が落ち着いた頃を見計らって、ストロノーヴァ先生が2杯目のお茶を差し出してくれた。


「かつて抑制されているようだと話しましたよね?
 久し振りにノイエに連れてこられた様子では、それ程感じなかったのですよ。
 ですが、その話を殿下がなさろうとすると、発作的なものを起こしてしまう……
 彼女もまた、その事について何かを抱えているのかも知れませんね」

「聞き出せたら、彼女は楽になれますか?」

「……殿下はアグネス嬢の分も引き受けられると?」

俺は頷いた。
もし、アグネスが何かを言いたいのに言えないのなら。
それがあの身体の不調を引き起こしているように思えて。
打ち明けてさえくれたなら、それがどんな事であろうと、俺が引き受ける。

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