この胸が痛むのは
新学年が始まってすぐの、お昼休みの図書室は
人影もまばらでした。
きっと皆、新しい教室で、新しい顔触れで、新しい関係を築くのを優先されているのでしょう。
本来なら私もその場に居た方がよいのはわかっていました。
最初にグループに入れなければ、クラスで外れてしまう。
それがわかっていても……

まだ時間は有る、もう時間は無い。
この事を考え始めると焦燥感に駆られてしまう私でした。

その分類の書架が次の列で終わろうとしていて、私はそこへ入ると目の前に現れたひとに既視感を覚えました。
そのひとは直接床に座り書架にもたれて、読書をしていたのです。

イシュトヴァーン・ストロノーヴァ先生。


学園の図書室で、昼休みに会いに行った。
いつも床に直接座っていたり、寝転んでいたり、大人の癖に行儀が悪い先生。
取っつきは悪いのに、話し始めると色んな話をしてくださった。
読書の邪魔をしてるのに、いつもその場所に居てくださった。

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