この胸が痛むのは
赤い瞳の方は読んでいた本を閉じられました。
そのまま立ち上がり、こちらへやってこられました。

私より頭1つ以上背が高く、綺麗な黒髪を肩の辺りまで長く伸ばされていました。
背は高いのに細身で華奢で、綺麗な顔立ちをされていたので一瞬女性かと思いました。
ですが、制服のタイは紺色で1学年上の男性の先輩であることがわかりました。
それに目の前に立たれると、ストロノーヴァ先生とは全く違う印象の方でした。


じっと私の顔をご覧になり、皮肉そうに微笑みました。


「へぇ、今まで女の子から色々と声をかけられてきたけれど、ストロノーヴァの名前を出すなんて、怖いもの知らずだね。
 1年生でしょう、何処から来たの? 金髪だね、留学生?」

「……バロウズからです」

仕方なく答えながら、私はしまったと思いました。
ややこしいひとに声をかけてしまった。
場所が図書室だったせいで、先生を懐かしむあまり、似ても似つかないひとに声をかけてしまった。


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