この胸が痛むのは
「読書の邪魔をしてしまい、申し訳ありませんでした。
 ご事情のよくわかっていない新参者ですので、お許しくださいませ」


不注意にストロノーヴァの名前を出してしまった自分を呪いたくなりました。
この国ではその名は特別であると、既に知っていたのに。


「俺はまだストロノーヴァじゃないんだ。
 いつかなるかも知れないし、いつまでもならないかも知れない」

謎かけのような訳がわからない事を言われて、私は後ずさりました。


「本当に申し訳ございません。
 失礼致します。ごめんなさい」

頭を下げて、小走りでその場を去りました。
怖い怖い怖い、と、心のなかで繰り返しながら。
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