この胸が痛むのは
現在、私の保護者である祖母は外国の前伯爵夫人。
この国では何の権力も持たない祖母を通しての、お会いしたいという書状さえ、先生に届く前に撥ね付けられてしまう気が致しました。
バロウズの現大臣である父の名を出せばどうにかなるかも知れませんが、確認の為にバロウズヘ問い合わせ等されてしまうと、ややこしくなる気もしてしまって……
先生が無理なら、やはりリーエに聞いてみるしか方法はないようでした。


昔、先生と知り合ったばかりの頃。
簡単に先生がお話をしてくださっていたのに、
ちゃんと聞いていなかった自分を後悔しました。
幼い頃から父に言われておりましたのに。
時間は無限にはない、と。



私は私のしてしまった呪いを、贖わなくてはならない。
アシュフォード殿下が本当にお求めになっているものを、お返して差し上げなくてはならない。

その日を迎えるまで。
時間は無限にはない。


 ◇◇◇


思うように事が進まず、焦れる気持ちを抱えながらも、表面上は平和だった私の毎日に、いきなりの突風が吹きました。
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