この胸が痛むのは
皆様お美しいのですが、その中でも一際お美しいご令嬢がにこやかに微笑みながら仰いました。
その方は襟元で結ばれたリボンが濃い緑でしたので3年生。
他の3人の方は皆様紺色でしたので、2年生だと知れました。


「こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します」

まずは呼び出された理由をお話されました。
イルナ様も含めて皆様は中等部の演劇部の部員だと仰いました。
何でも、毎年7月に高等部、中等部それぞれの演劇部が王立歌劇場の小ホールで舞台の上演を行うのだそうです。

王立歌劇場……小ホールでとは言え、あまりにも大きな舞台で学生の演劇が上演されるなんて。
何代か前の国王陛下が演劇部に在籍されていて、その頃から毎年恒例の行事になったそうです。


「去年の舞台が終わってからずっと、今年の劇の主演をお願いしていた御方がなかなかうんと言ってくださらなくて」

「その御方は、演劇部ではないのですか?」

「そうなの、だけど今年の作品のイメージに合うから断られても、何度も交渉していて。
 先日、条件に貴女が相手役なら、と仰ったの」

……何だか、嫌な予感がしました。


「貴女のお名前はご存知なかったのだけど。
 1年生で、バロウズからの留学生で、金髪の女生徒は貴女しかおられないでしょう?
 どうか、私達演劇部を助けると思って、相手役を引き受けていただけないかしら?」


< 425 / 722 >

この作品をシェア

pagetop