この胸が痛むのは
多分、オルツォ様は女生徒からとても人気のある御方なのでしょう。
綺麗なお顔をされていて、部にも入っていないのに主役を望まれて。

条件などつけても反発されず、直ぐに代わりに動いてくれて。
遅れて行った食堂でも、席を探さなくても譲られる。

先生のご親族なら、きっとオルツォ家はこの国では有力で、将来はトルラキアの中央でご活躍されるような御方なのだと思います。


「はい。全く、少しも」

オルツォ様には失礼な物言いになりますが。
はっきりとお伝えしようと思いました。
それなのに、おかしそうに笑顔を見せられるのです。


「はっきりと言うね?」

「トルラキア語の会話に、まだ慣れていないからです」

「バロウズに婚約者が居るとか?
 決まった相手が居るのかな」


決まった相手ではなく、決めたお相手が。
私の心の中心に居るのは、優しい紫の瞳をした
あの御方だけなのです。


「私の片想いですけれど」

「もしかして、叔父上じゃないよね?」


とんでもない事を言い出されて、いい加減この方とお話するのにも疲れてきて。
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