この胸が痛むのは
「先生ではございません、失礼致します」

「……わかったわかった、君は結構短気だよね?
 真剣に怒ってるね」 

「誰に対しても、ではありません。
 どちらかと言えば、穏やか、と言われます」

「じゃあさ、俺に対してだけなんだ?
 そういうのもいいね」

「……」



……初めて会った日は、怖いひとだと思ったけれど、今は面倒なひとだと思い始めていました。
このひとと居ると、いつもより周囲から見られている気がしました。
それも、ご一緒したくない理由のひとつでした。

昼食も取れていませんでしたが、お財布を持っていないし、奢ってほしいのかと思われるのも業腹ですし、このまま教室に戻ろうと思いました。

歩きだした私の後ろに、オルツォ様が続きます。


「叔父上に会わせてあげるよ」

「結構です」


リーエに会って教えて貰えなければ、父の名前で手紙を出す事にしましょう。
手紙さえ読んでいただけたら、先生はお時間を取ってくださる。


「バロウズの関係者はなかなか叔父上には会えないよ。
 強引にあの国へ行った事を、ご当主は本音では許していないから」

「……」

「ガチガチの純血主義者でね、叔父上がバロウズで女性と付き合って、連れて帰って来るのを心配してた。
 5年後ひとりで戻ってきたから、親族全員が安心した。
 そこにスローンの名前を使って、若い君がひとりで現れたら、叔父上の立場はまずくなるかも」

「……」

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