この胸が痛むのは
皆様考えている事は同じで、私と同様に何人もの方がブーケを手にして待っていました。

イルナ様はヴィーゼル様達と一緒に出てこられたので、駆け寄って花束を渡しました。


「お疲れ様、素敵でした」

イルナ様はヒロインの妹役を可憐に演じられていて、来年再来年にはきっとヒロインを演じられるのだろうと思われました。
花束を嬉しそうに受け取って、イルナ様は微笑みました。
そして、私の頬に頬を寄せて……


「オルツォ様はこちらからは帰られないの。
 舞台の袖で貴女を待っていらっしゃるわ。
 あの方が演じるのはこれが最後なの。
 どうか、行って差し上げて?」


あんなにひとを魅了する演技をするオルツォ様がこれを最後にする?
学生の間だけだとしても後4回は出来るのに、
それは勿体ないと思いました。

ご本人も演じることがお好きな様にも感じられたので、イルナ様に手を引かれるまま、私は裏から舞台袖へ進みました。
オルツォ様は舞台のヘリに腰をかけていらっしゃいました。


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