この胸が痛むのは
その姿を見てイルナ様は私を残して帰って行かれました。
客席の方を見ているオルツォ様の背中を見ていたら、今までのこの方の印象が違って見えて。


「お疲れ様でした」

ゆっくりとオルツォ様が振り向かれて。


「スローン嬢か、舞台から見えてたよ。
 ここからでも、君の髪は目立つね」

「……素晴らしい舞台でした。
 オルツォ様があれ程、見事な……」

「演技はずーっとしてるから、得意なんだ」


今まで見せてきた軽薄そうで強引な姿が演技?
そして今の静かな感じも演技?
よくわからないので、話題を変えようと思いました。


「……あの、お呼びと聞いて」

「学院じゃ声をかけても、いつもお花を摘みに行くから、聞いて欲しい話も出来ないし」

「……申し訳ありません、そういう体質なので」

「体質じゃ仕方ないね……今、話せるの?」


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