この胸が痛むのは
クラリスは自分を追いかけて来たら、と先生に
返事をされたと言っていました。
ご自分に愛の告白をしてきた生徒が亡くなった。
それを先生はどう受け止められるのか……

姿勢を戻された先生は姉の死を悼む様に、少し
目を瞑られました。
かつての姉の姿を思い出されているのでしょうか。
そのお姿からは特別な感情は読み取れず、ただ名前を知ってるだけの知人を悼んでいる様にも見えました。


「……君にお悔やみを、お悔やみを言わないといけないのだけれど。
 申し訳ないけれど、少し……
 後にしてもいいかな」


それだけ仰って、先生は私から離れて行かれました。
その後ろ姿を見送るだけの私に。


「結局、約束はまだしてないね?」

先生と話していた間、距離を取られていたオルツォ様が隣に来られました。


「どうして直ぐに約束しないの?」

「また……またでいいの。
 またオルツォ様にお願いしますね」

会う約束をしなかった事より、先生が見せた動揺に驚いていました。
表情を変えられなかったのに、不自然にこの場を去られた。
やはり姉が亡くなった事は、先生にとっても辛い事だったのでしょうか?


「アシュフォード殿下が君の片想いのお相手?」

「……」

少しですが、離れていたのに。
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