この胸が痛むのは
「ちゃんとしたら凄く素敵で、君の姉上が一目
惚れしたそうだよ」


それで自然にクラリスの話を出せた。
ところが、アグネスが黙ってしまって。
侯爵夫人との関係は元には戻っていなかったが、クラリスとの仲は悪くなかった。
不自然な感じだったかな?


そうだ、アグネスにはクラリスの想いびとについて、先生だとは話していなかった事を思い出した。
唐突過ぎたな。


クラリスから聞いた『中等部の頃、来られたばかりの先生に図書室で一目惚れをした』という話をするか。
それとも俺やレイの前では絶対に見せないのに、先生の前でだけ乙女に豹変する話にしようか。
その2択で迷っていたら。

『クラリスはストロノーヴァ先生を追いかけて、トルラキアへ行こうとしていたのは本当ですか?』と、尋ねられた。

クラリスがそこまで自分で話したのか。
先代に追求されては可哀想だから妹には話さないと、亡くなる前日には言っていたのに。
あの日の事は未だに思い出すと胸が痛む。


< 446 / 722 >

この作品をシェア

pagetop