この胸が痛むのは
「そのお手伝いを殿下がしようとしていたのも?」

「そうだよ、姉上から聞いたの?」

自分の家出の計画に俺がどこまで関わっていたのかも話したのかな。
あの時は話せなかったけれど、クラリス本人が
アグネスに話しているのだから、もう隠さなくてもいいよな。


「……どうして?」

「どうして、って、そう約束したから」

「それは、もしかして、や……」

残念だったが彼女が言いかけた途中で、馬車が
止まり。
これでストロノーヴァ先生の言う、中途半端に
会話を止めるに成功しただろうか。


アグネスの頭の上で、先生と視線が交錯する。
『上手く出来たか?』と聞かれたようで。
『多分』と目で伝え、頷いた。


公爵家の家令を先頭に、応接室に案内される。
部屋の中には既に女性が居た。
この方が催眠術を専門に?


その職業から想像していたのは、眼鏡を掛けて、
聡明そうだが、神経質にも見える細身の女性
だったが、目の前で微笑んでいるのは、少し
ふくよかで包容力のありそうな女性だった。

なる程、この方になら安心して何でも話せそう な気がする。 
彼女は丁寧にカーテシーをした。


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