この胸が痛むのは
侯爵夫人とクラリスが亡くなったのは、馬車が
滑落したからだ。
それに至った詳細は先生に話した。

特に口止めはしなかったから、事前情報として
先生は夫人の耳にも入れている筈だ。
だから、この場の3人は呪いのせいだなんて思っていない。

口にしてしまって楽になったアグネスは、辿々しいが言葉を紡いでいく。



アンナリーエから教えて貰った恋の邪魔者を消す呪いの方法。
グラスに満月を映して……とやり方を話す。

時折、黙る合間に夫人が相槌を打った。
それは全て肯定的な短い相槌。
『そうなの』『わかるわ』とか。


だが結果はグラスは割れ、呪いは完了しなかったという。
それなのに翌日、姉が亡くなってしまい、無関係だとは思えない、とアグネスは辛そうに話した。


「どうしてアグネスはお姉様に消えて欲しかったの?
 邪魔に思うことをクラリスがしたのでしょう?」

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