この胸が痛むのは
「皆が貴女を愛しているの。
 とても大切に想っている。
 その想いを受け取ることを恐れないで。
 お母様とお姉様もね、今でも貴女を愛しているのよ。
 おふたりは貴女のせいだと思っていらっしゃらない」


アグネスのぎゅっと瞑った目頭が濡れているのが、ぼんやりした灯りの中でも見えた。


「もう、休んでね?
 ゆっくり眠ろうね。
 殿下の方に凭れて……」


自分が抱き締めていたアグネスの身体を、夫人は俺の方にゆっくり倒すように渡してきた。
俺の胸に背中を預けてきたアグネスの重みが、あまりにも軽くて……

『貴方が語る言葉と、自分自身の目で見た貴方の姿だけを信じます』

かつて腕の中で、噂など信じないと、俺を見上げて誓ってくれた君は笑顔だった。
俺が語った偽りの愛の言葉と、見られた名前入りのカードが君の本当の笑顔を奪ってしまった。



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