この胸が痛むのは
「アグネス嬢も15歳になり、言い方は悪いですがそれを巧妙に隠せる様になってきています。
 それでもイェニィ伯爵夫人にはそれがわかりました。
 9歳の頃ならもっとそれは明らかだったでしょう。
 それも、アンナリーエ嬢の前では抑制せずに 素顔を見せ始めていたのですから」

交互に話すと打合せをしていた様に、今度は先生が話し出す。


「殿下がお戻りなるまでの間に、イェニィ夫人から聞いたのですが。
 アンナリーエ嬢の実家はホテルを経営していて居心地の良さから長逗留する国内外の客も多い。
 そこで様々な人間とふれあい、多様な価値観を持つ大人に囲まれて育った、柔軟な考え方の持ち主だと聞きました。
 殿下には申し訳ありませんが、それこそ侯爵夫人に大事に育てられたアグネス嬢とは正反対ですね。
 だからこそ、ふたりは身分をこえて仲良くなれた。
 アンナリーエ嬢はアグネス嬢から、姉と殿下との関係や母親に関しての話を聞いていて、彼女が心配になった。
 この子は思い詰めると何をするかわからない、そう思った」

「……」

「誰かを殺したくなるくらいに憎んだらと、彼女が教えてくれたとアグネス嬢は言っていましたね。
 リーエ嬢は、それで気が収まる様になるならと考えたが、大切な友人に呪いの儀式等本当はさせたくない。
 それで恋が叶うおまじないを、呪いと称して
教えたのでしょう」

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