この胸が痛むのは
話して泣いて優しく抱き締められて、本当に眠りに落ちて。
深い眠りから覚めたら、とてもスッキリしていて。
私を背中から抱いていてくださっていた殿下と
目が合った時、催眠術にかけられてよかった、と思いました。

私はもう謝らなくていい。
謝って貰う側の人間になったのだ。



その直感の通り、翌日から殿下には謝罪されるようになりました。
生誕夜会の事、リヨンの女王陛下の事、姉をパートナーにしてブレスレットを渡してしまった事。

ドレスとカードを贈ることになった経緯やそれを原因としたバージニア王女殿下の嫉妬からの事件の真相。
温室で私が聞いてしまったトルラキア語での会話の秘密、そしてあの愛の言葉。
それらを全て話してくれました。


殿下がずっと私に話を聞いて欲しいと言っていたのは、この事だったのだとわかりました。

私は姉の代わり、ではなく。
私だけが出会った時から好きだったと仰ってくださいましたし、ずっと欲しかった『愛している』という言葉も何度も仰せになって。
『許さなくてもいい、謝りたい』
何度も頭を下げられて。

それらを全部、殿下は惜しむことなく与えてくださったのに。



< 484 / 722 >

この作品をシェア

pagetop