この胸が痛むのは
自分でも理解出来ない感情でした。
許さなくてもいいなら、許すとは言わない。
大好きな大好きな……このひとしか私は好きに
なる事はない。

愛しているのに、憎い。
憎いのに、他には誰も要らないくらい愛している。
このひとが居なければ、母と姉は今も生きていたかも知れない。


色んな感情が私のなかで渦巻いていました。
それを別の私が見ているのです。
君だけを愛していると抱き締められている私を
見ている別の私こそが、本当の私。


その不思議な感覚が、いつの間にか不思議でなくなり、当たり前に受け入れる様になるまで、それ程の時間はかかりませんでした。


 ◇◇◇


長い休暇を終えられて、アシュフォード殿下は
バロウズへ帰国されました。
再び、私は日常へ戻る筈だったのですが。
イェニィ伯爵夫人が伯爵家へ私をお誘いしてくださる様になりました。

アーグネシュ様は普段は王都学園で週に2回程
相談室を開いていらして、そちらでリーエと知り合われたそうなのです。


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