この胸が痛むのは
リーエにも、ストロノーヴァの名前の特別感は
浸透している様でした。
愛する息子ネルシュくんの柔らかな頬に、頬擦りしながらリーエはしばらく思案してくれていました。


「……トマシュのおばあちゃんなら、もしかしたら知ってるかも」



私は母と姉が亡くなった原因は、自分が呪った
からだ、と思い込んでいました。
あれは成功しなかった、完了しなかった。
だから呪いは成立していない。
そう思いながらも、呪おうとした事自体が許されない事だからと。


『君が呪いだと思い込んでいるのは違っていて、アンナリーエ夫人が教えたあれは恋のおまじないだった。
 だからその呪いで、母上も姉上も亡くなったのではない』

『バージニアから命じられたローラ・グレイシーが脅すつもりで、馬車を煽って事故になったのだ』

その様にアシュフォード殿下から説明を受けても。
それでも、幾等かは私の責任も感じていました。



ただ眠っているだけの様に見える母と姉の遺体の側に並べられたふたりの持ち物。
それらは翌朝明るくなってから、出来るだけ綺麗にして届けられたのでした。

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