この胸が痛むのは
殿下と姉の仲に苦しんでいた私に、殿下のお心を試すような振る舞いをして見せたのも、同病相憐れむ、といわれるものだったのでしょう。
オルツォ様がこの国を出たいと仰った、その気持ちが痛い程私にはわかりました。

私と殿下とを心配してくださっての行動でしたので、あの日の事はこれ以上言うのは止めました。


「ドレスを買って貰ったという事は、無事に仲直りしたんだね?」

「ドレスは父が払うと決めていたので。
 それに仲直りだなんて……喧嘩をしていた訳ではありませんわ」


にやにやと面白そうに笑っているオルツォ様に、催眠術を受けて、隠していた事を話して、殿下
からは今までの説明と謝罪をされた事を聞いて
いただきました。


「催眠術を? 叔父上が?
 意外だな、信じたみたいだった?」

「検証した結果は聞いていませんから、お信じになられたかどうかは……」

オルツォ様からは殿下がクラリスを生誕夜会の
パートナーにした事と、ご自分が私を選んだ事が重なっていたのだと、言われました。
そう言われてみると、姉妹で『そういう間柄にはならないから』と、申し込まれた理由が同じだったと気付きました。


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