この胸が痛むのは
「父上はもう今は、王命なんか聞かん、って感じだろ?
 殿下はこれは王命ではない、私が何年前から
この時を待っていたかとか言いに来て、情に訴える作戦で、延々と年内ギリギリまでやっていたらしくて」

「年内ギリギリまで? それで結局どちらがお支払を?」

「父上の根負けで、殿下の勝利。
 父上も王家に対しては厳しい事を言ってても、殿下個人には含むところがないからな?」


私は父が支払うものだと仰っていたので、お迎えに来てくださった殿下が私の様子を誉めてくださったのには御礼を申しましたが、ドレスをプレゼントしていただいた事に御礼を申し上げませんでした。


「お父様も教えてくださっていたら……」

「殿下が口止めなさったらしいよ、婚約者でも
ないのに気を遣わせたくはないから、と。
 父上は黙ってても、俺は口止めされてないからな?
 おしゃべりな兄貴から聞いたと、ちゃんと御礼は申し上げるように」


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