この胸が痛むのは
「もう伯爵位が始まったから、国王陛下が迎えに行け、と」
私にはそう言って、兄に先立って歩き始めました。
殿下が歩む先では皆が譲り、道を作っています。
先には父が、私達3人を待っていました。
ドレスの裾を捌きながら、前を向いて歩く練習は。
殿下とは途中で終わってしまったけれど、トルラキアでは、ひとりで続けていました。
姉の身代わりなんて嫌だ、と言いながら。
優しい眼差しを避けて、差し出された手を握らなかったけれど。
殿下から離れたい、と願いながら。
私はこの日をずっと夢見ていたのです。
視界の端には初等部で同級生だった皆様が驚いた様に、殿下にエスコートされる私を見ているのが、見えていました。
初等部6年を始まったばかりで中途退学した私が3年振りに現れて、王弟殿下に手を取られている。
苦々しく思われた方達からの小さな声が聞こえました。
それは大人達の声でした。
「あれだけ似ていたら」
「代わり、じゃない」
「殿下に見初められた、ということ?」
小さな声なのに、何故か耳に届いてしまった。
この私の姿を、かつてのクラリスを知っていた方達が見れば……
覚悟はしていても。
その声は私の中の奥深くに突き刺さり、抜けてはくれませんでした。
私にはそう言って、兄に先立って歩き始めました。
殿下が歩む先では皆が譲り、道を作っています。
先には父が、私達3人を待っていました。
ドレスの裾を捌きながら、前を向いて歩く練習は。
殿下とは途中で終わってしまったけれど、トルラキアでは、ひとりで続けていました。
姉の身代わりなんて嫌だ、と言いながら。
優しい眼差しを避けて、差し出された手を握らなかったけれど。
殿下から離れたい、と願いながら。
私はこの日をずっと夢見ていたのです。
視界の端には初等部で同級生だった皆様が驚いた様に、殿下にエスコートされる私を見ているのが、見えていました。
初等部6年を始まったばかりで中途退学した私が3年振りに現れて、王弟殿下に手を取られている。
苦々しく思われた方達からの小さな声が聞こえました。
それは大人達の声でした。
「あれだけ似ていたら」
「代わり、じゃない」
「殿下に見初められた、ということ?」
小さな声なのに、何故か耳に届いてしまった。
この私の姿を、かつてのクラリスを知っていた方達が見れば……
覚悟はしていても。
その声は私の中の奥深くに突き刺さり、抜けてはくれませんでした。