この胸が痛むのは
殿下に抱かれて踊りながら、それを思い出して
しまいました。
15で贈られた靴先が紫色の、水色のシューズ。
サイズが合っていたのは僅かな間だった。
その前の14の時にいただいたのはクリーム色で、薄紫の小さなスミレの刺繍が入っていました。
柔らかくてとても踊りやすくて……

私はお気に入りのそれを履いてオルツォ様の腕の中に居た。
自分のデビューじゃないから白いドレスではなく、クリーム色で何本もの水色の細いリボンを通したドレス。

パートナーになりたいと自分から望んだ訳ではない。
それを言い訳にしながらも、殿下の事で泣いた後は私はそれなりにトルラキアの夜を楽しんでもいたのです。

頭のどこかで。
殿下はクラリスとファーストダンスを踊ったのだ。
夜会を楽しんでいた。
私だって他のひとと楽しんでもいいはずだ。
そう繰り返して。


どなただったか、生誕夜会に出席したお姉様から聞いたと、教えてくれた同級生が居たのです。

『殿下と貴女のお姉様は2曲続けて踊った』

『とても息が合っていて、複雑なステップもこなしていた』

『練習もしていなかったらしいのに、余程仲がよろしいのね、自分の姉が王子殿下の恋人って、どんな気分なの?』



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