この胸が痛むのは
「バロウズでも、同様だと思うのですが、年末
年始は宮廷行事も何かと立て込んでいますの。
 王配として隣に立っていただかなくては困る
事も多くて。
 年始行事が終わって、春になる前には。
 クライン殿下に出会いを用意するつもりです」

「……出会い、ですか」

「リヨンの王家に忠実な、遠縁の家門のご令嬢です。
 緑の瞳の美しいご令嬢です」

オーガスタは緑の瞳が美しいのだとクライン殿下は愛おしそうに話していた。


「彼女はきっと、殿下のお心をお慰めするでしょう」


貴女はそれでいいのですか?
貴女の瞳もとても綺麗な緑色なのに。
クライン殿下はそれに気付いていないのか。
俺は女王陛下に尋ねられなかった。


俺達一行がバロウズ城に到着したのは、新年夜会の3日前。
冬の日の入りは早くて、夜道を馬で駆けるのは
危険なので、夜早めに休み、朝早く出発する。
日中は昼食を取る以外は馬上だ。
それを5日かけてリヨンから王都に戻ってきたのだ。

コーカスでは新しい馬に乗り換えた。
到着してから国王陛下に報告をする。
案の定、陛下の顔が無表情になる。
激怒すればする程、顔に出ないのが陛下だ。

それから俺は15時間以上眠り続け、空腹で目を
覚まし、食事をして、また眠った。
腰も尻も足も痛くて、重い鉛の様だった。

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