この胸が痛むのは
デビュタントの行事が終われば退席する末の王弟エディは12歳と大きくなって、口数が減ったらしい。
もう遊び相手を探して彷徨く年齢じゃないな。
腹違いだが、俺達は一番よく似ている。
一瞬、俺がエディと同じ12で、9歳のアグネスと出会っていたのなら、あの悲劇は無かったかもしれない、そんな考えが頭をよぎった。

下の兄ギルバートとイライザ妃の間には、まだ
子供は居ない。
相変わらず囲むように妃を溺愛しているが、最近は俺にもここの夫婦の舵取りはイライザ妃が行っているのがわかるようになってきていた。
知らぬはギルただひとりだ。

国王陛下と王妃陛下には、2年前に王女がひとり生まれていた。
大人数が一堂に会した夜会には、5歳以上でないと顔見せしない。

バロウズでは現状男子のみが王位に就く事になっているが、側妃など娶るつもりのない国王陛下はこのまま王子が生まれなければ、王太女擁立に向けて議会を動かすだろう。

王太后陛下が俺に尋ねる。


「侯爵令嬢には会わせてくれないの?」


6年前の始まりはこの場から、だった。
また、何かを渡すおつもりか?


「まだ、そういう間柄ではありませんので」

「アシュ、貴方は何年かけて……」

「母上、もう我々は余計な事はしないと」

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