この胸が痛むのは
国王陛下が言いかけた王太后の口を制する。
イライザ妃の笑顔が消え、ギルバートは何も話さなくなる。

王妃陛下は場を取り成すように、エディにもっと食べるように勧め。
気を遣って、幼さを装ったエディは口に残っているのに、その上から詰め込む。 


何故だか自分でもわからないが『地獄』と、その言葉が頭に浮かぶ。
……もう俺は無理かもしれない。
急にこの場に居る事が嫌になる。
どこの国の王家も地獄だ。


リヨン王家で無理に笑う女王陛下。
彼女はこれから、名ばかりの夫に愛せる女を与える。
ラニャン王家は余計な事をした子爵令息の処理に既に動いただろう。
誰かの花嫁になる筈だったオーガスタはどうなったのか。
ここでもそれを突き付けられる。  
王家の為なら、人の想いや命は軽く扱ってもいいのか。

俺もそちら側の人間で、無邪気に笑いかける
クライン殿下とは二度と会わないと決めたのに。 
堪らず、外に出る。

責められる事はあっても、責める権利はない。
楽に呼吸がしたい。
もうすぐ招待した貴族達の入場が始まる。
アグネスとレイも、夜会会場に移動しただろうか。

< 534 / 722 >

この作品をシェア

pagetop