この胸が痛むのは
バロウズはこれまで王城の官吏職も世襲制だったが、国王陛下はこれもいつかは改めたいと考えていた。
プレストン本人にはそんな事は耳に入れていないのに、自ら父親の地位を継がないと勉学に励んでいるのは、慧眼だと思う。

世襲君主制に触れる事なく、血筋よりも能力に合った人材の育成確保をどう進めるのかが、国王陛下の課題だった。


プレストンが話し出す。

「狐の子供……子狐とはどうなりました?」

吊り気味の細い目をしたウィルヘルム皇帝を狐、娘のアンヌ・ゾフィ皇女を子狐と、バロウズ関係者内では呼んでいる。


「どう、って、あれか……」

子狐こと、17歳のゾフィ皇女との縁組を皇帝から打診されたのだった。
もちろん、その場で断った。
内々に決まった、国王陛下も認めている婚約者が居るから、と。
はっきり伝えないと、この手の話は大きくなり、ろくな事にならないからだ。

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