この胸が痛むのは
どこからこの話が、プレストンに漏れたかな。
同行していた大使館の首席事務官か。
口の軽いあいつは、更迭候補だ。
前国王の元、南の彼方へ送り込もうか。


「きっぱりと断ったから、絶対にアグネスには言わないで」

「あいつも、何を考えていているのか……
 我が妹ながら、さっぱりです」

「卒業するまで待ってと、言われているから」

俺を気遣って、妹を悪く言いかけたプレストンを止めた。
本当は俺だって聞きたい。
卒業まで待ってと、君は言ったけれど。
3年したら、本当に君は俺の手を取ってくれるのか?


「これからもお忙しいのが、続くのですか?」

「そうだな、あちらこちらの仕上げがあるんだ。
 だから丁度いい……3年なんてあっという間だよ」

アグネスもバロウズに居ないのだから、あちらこちら行かされるのも丁度いいのだと、思おうとしていた。

ここが済めば、また休暇でアグネスに会える。
来年の春先には、北のキラール王国。
年末は東の国のジャカランタへ行く。
そして再来年は……2年先まで外国訪問予定は続く。

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