この胸が痛むのは
だから、嘘を教えたと、リーエを責めるつもりもなかったのですが……
リーエは何も言いませんが、おそらくアーグネシュ様から何かお話があったのかも知れません。

もう二度とアグネスには、そういう類いのものを教えてはなりません、と。
だから、トマシュさんのおばあ様に会わせないようにしているのだと思ったのでした。




何の手立てもないまま、秋を迎えて。
私はバロウズへ一時帰国致しました。
兄は帰国しなかったのですが、母と姉の命日を、父や祖母、叔父の家族と静かに過ごし……。

そして姉クラリスの誕生日が。
例の死人還りを行えない今年もまた、クラリスには会えないのだと、半ば諦めていました。
ですから、前回の2年前のように、1日に何度も姉の部屋を訪れるのもやめようと、思っていました。

父は今年も登城して留守だったのですが、何だか家令を始め、使用人の皆からずっと見られているような気がしたからです。
彼等から見ても、前の私の行動はおかしかったのだと気付きました。

それでも、父には報告をしないでくれていたから助かりました。
もしされていたのなら、今日父は仕事を休んでいたと思われたからでした。
< 550 / 722 >

この作品をシェア

pagetop