この胸が痛むのは
クラリスが現れるのを待っている。

私がそう答えたら、父はどうするのでしょうか?
バカな事を言うなと叱られて、私は部屋へ追いやられ……
最悪の場合、姉の部屋に入れぬ様に鍵をかけられてしまうかもしれません。


家令のゲイル、メイドのレニーとロレッタ……
皆が危なっかしい私を静かに見守ってくれている事にも、気付けていない私でした。


今年も姉の部屋で、椅子に座り、心の声で呼び掛けて。

お願い。お願いします、お姉様。
一度でいい、少しだけでもいい。
お顔を見せて。
貴女に謝りたいのです。


『許さなくてもいい、謝らせて欲しい』
殿下はあの催眠術の後、私にそう言った。
許さなくてもいいなら、許さない。
跪いて頭を下げられたのに、私はそう思った。


そんな私の謝罪の言葉など、クラリスには届かないのでしょうか。


 ◇◇◇


リーエには誤魔化され、ストロノーヴァ先生にも聞く事も出来なくて。
救いの手は、思わぬところから差しのべられました。

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