この胸が痛むのは
トルラキアでは、ストロノーヴァ公爵家は王家に続く名家なのは有名でしたし、オルツォ侯爵家とイェニィ伯爵家は『ストロノーヴァの両翼』と
呼ばれているのを父も存じていて、心配なく預けて欲しいと、ここでも先生が仰ってくださったのでした。


何かとお気遣いくださって、どれだけお礼を言っても足りませんが、頭を下げて感謝の思いを伝えました。
すると先生は軽く頷かれて、小さな声で尋ねられました。


「花が届いていたみたいだね。
 ノイエとは連絡を取っているの?」 



『哀悼の意を捧げます マルーク』と。


薄いグレーのカードを添えられた、それは白い
紫陽花の花籠でした。
紫陽花はバロウズでは夏が始まる前の花なのですが、気温の低いトルラキアでは夏の終わりまで
咲いているのです。
たった三度会っただけなのに。
祖母は好きな花を教えていたのでしょう。


先生が祖母の葬儀に来てくださるとは思っていなかったので、私はオルツォ様から届いた花を、
葬儀の場に飾りました。

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