この胸が痛むのは
死人還りなどあり得ないのだと……
かつてリーエが教えてくれた邪魔者を排除する
呪いも、本物ではないと知っていながら行いました。
その愚行の結果、原因は他にあるのだと心のどこかで思っていたのに、自分のせいだと自らを追い込んでしまいました。



先生はご自分では説教と仰ったけれど、叱られていると言うよりも、ご心配をおかけしているのだと、頭では理解しました。
自分でも、私はまともではない、死人還りは邪なものだとわかっているのです。
ですが、それを試さずにはいられないのです。
もしも、あり得ない筈の死人還りが成功して。

許されなくてもいいと、それは建前で、本心は。
クラリスが目の前に現れてくれて、私を許してくれたなら。
迷いや恐れを捨てて、差し出してくれた殿下の手を私は取るでしょう。

貴方が手を引いてくれたら、先生が仰った
『明るいこっち』に戻れる様な気がするの。

……ですが、反対に『恨んでいる』と、言われたら?



「アグネス、ここに居たの?」

背中から殿下に抱き締められました。
祖母の葬儀に駆け付けて来てくださってから、
ふたりきりになったのは初めてでした。


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