この胸が痛むのは
「死人還りの方法を、アグネス嬢が聞いてきた?」

ストロノーヴァ先生らしくない硬い声だった。
去年の夏、ダウンヴィル前伯爵夫人の葬儀の日。
先生と特に話もしないで並んで居たら、カランからイェニィ伯爵夫人が俺達に話をしたいと言っていると聞かされた。 
先生も頷かれたので了承すると、夫人はアンナリーエ夫人を連れてきた。

アグネスは何年も前からアンナリーエ夫人に、
それを知ってる人は居ないか尋ねてきていた、と言う。

しびと? しびとがえり?
新月の呪いやら、満月のおまじないやら、この国には理解しがたい言葉が多すぎる。
それに何年も前からなんて……


アンナリーエ夫人は、教えてくれるかもと、夫の祖母の名前を出したと言う。
それが3年以上前。
デビュタント前の頃の話だなと、当時のアグネスの様子を思い出す。
イェニィ伯爵夫人の催眠術を受けて、心の内を話して例の発作も出なくなって、デビュタントの
ドレスを発注して……

それなのに、可愛い顔して頭の中では死人の事を考えていた?
軽く衝撃を受けた。


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