この胸が痛むのは
「当日までにアグネスが誰か協力者を見つけて、部屋にも入れて貰えないなら、部屋の前で待機
します。
 誰も見つけられていないようなら、邪魔はしない、立ち会うだけだの、うまく言って無理にでも部屋に入りますよ」

そう言った俺を、納得し難い目で先生は見ていた。


 ◇◇◇


夏を迎えた頃だった。
少しずつ、俺の休み無しの外交ペースも落ちてきて。
バロウズで過ごす日々も増えていて、一見俺と
アグネスの間も順調に見えていた。

どんな集まりだろうと出席する場合のパートナーは、いつもアグネスだったし、踊る相手もアグネスのみ。
帰国して半年以上経って、彼女も社交界で新たな友人も出来て居場所を見つけた。


人々の関心は既に、俺達に対して
『似ているせいか』『妹だからか』から
『いつ婚約するのだ』『早く婚姻すればいいのに』に、変化しつつあった。
王家も侯爵家も落ち着いているのに、周囲だけが急いでいた。



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