この胸が痛むのは
今日の午前中に? 俺は会議に出ていた。
アグネスとは会えていないし、ここに残っていたカランも何も言っていなかった。
カランは首を振っている。
と、言うことは彼女は俺の執務室には来ていない。

アグネスが登城するのは、夜会の時くらいで。
登城の機会があったら、先触れ無しで、いつでもいいから俺を訪ねて欲しいと、前々から言っていた。 


「ご令嬢自らが、忘れ物を届けると言うことは……
 アグネス嬢は王弟殿下に会うつもりだった」

最近、カランの前でもレイは『殿下』と、俺を呼ぶようになっていた。
前置きが長いぞ、悪い話は早く言え。


「その帰り、こちらに寄ろうとして……廊下で
母上とばったりと。
 母親だから庇う訳じゃないが、決して待ち伏せしていたんじゃないのは、先に言わせて欲しい」

「……」

「ギルバート殿下の執務室から出てきたルメインはふたりの会話を全部聞いた訳じゃない。
 途中からだと言っていたが、母上がアグネス嬢を責めている様に感じたらしい」

「……何を言っていたんだ?」


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