この胸が痛むのは
既に侯爵には話していたが、初めて聞くプレストンは何とも言えない顔をしていた。
特に温室でクラリスにねだられて愛の言葉を言ったのを、アグネスに聞かれていたと言う話は、
自分の事のように身震いをしていた。


「霊的な心配はないと思いますので、アグネス嬢本人が自分自身を危険な目に合わせないように、側に付いていたいのですが」

「アグネスはともかく、殿下に危険は無いのですか?
 もしもの時は、王家の影が?」

「現状、こちらの邸に伺う時は、私には影を付けないようにしています。
 今件はここだけの話にしていますし、改めて
影も付ける気はありません」
 
「王家も側近の方達もご存じないと、言うことですか。
 ……でしたら私とプレストンが立ち会います。
 殿下に立ち会っていただく訳には……」


アグネスがクラリスの死を受け入れて前を向く為には、必要な儀式なんだと理解しようとしてくれた侯爵は、俺には関わらせたくないようだ。
あくまで身内だけで行おうとしていた。


「殿下のお立場を、お考えください」

「……以前、私の中に確かに存在するのは、これだけだと、聞いていただきましたね。
 今も変わらずアグネス嬢だけ、なのです」

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