この胸が痛むのは
その目付きや口元に浮かべた笑みがアグネスの
ものではない気がした。
もしかして、もう始まっているのか?
自分で自分に術をかけたのか?
ひとりでなんて、可能だっただろうか。
混乱した頭で、先生の話した手順をなぞっていると……
「どうなさったの? キスしてくださらないの?」
彼女からねだられるのは初めてで、確信する。
アグネスなのにアグネスではない人格だ。
俺の中ではクラリスは今では遠い存在になっていて、その表情や話し方も朧気になりつつあったがこんな感じだったかな?
妹からは姉はこう見えていたのか。
ストロノーヴァ先生からは、出来るだけ彼女に
合わせるように言われていた。
危険な状態になる前には術を解かねばならないが、今はまだ様子を見て合わせておこうか。
それで彼女の額に口付けた。
俺の腕からするりと抜け出したアグネスは楽しそうだった。
俺を振り返りながら、前を歩き。
先程とは違い、軽く弾むような歩調になった。
機嫌がいいアグネスを見ていると、あの日の彼女と重なった。
ものではない気がした。
もしかして、もう始まっているのか?
自分で自分に術をかけたのか?
ひとりでなんて、可能だっただろうか。
混乱した頭で、先生の話した手順をなぞっていると……
「どうなさったの? キスしてくださらないの?」
彼女からねだられるのは初めてで、確信する。
アグネスなのにアグネスではない人格だ。
俺の中ではクラリスは今では遠い存在になっていて、その表情や話し方も朧気になりつつあったがこんな感じだったかな?
妹からは姉はこう見えていたのか。
ストロノーヴァ先生からは、出来るだけ彼女に
合わせるように言われていた。
危険な状態になる前には術を解かねばならないが、今はまだ様子を見て合わせておこうか。
それで彼女の額に口付けた。
俺の腕からするりと抜け出したアグネスは楽しそうだった。
俺を振り返りながら、前を歩き。
先程とは違い、軽く弾むような歩調になった。
機嫌がいいアグネスを見ていると、あの日の彼女と重なった。