この胸が痛むのは
「……待って、待ってください」

また口調が変わった。
さっきまでと、声の大きさも違うので、俺は慌てた。 
この感じはいつものアグネスだろう。
どういう事なんだ? やはり死人還りじゃないな。


「ただし、今年も君がダメだと言うなら……」

まだ婚約もダメだと言うなら、年明けの新年大夜会、あの前にもう一度プロポーズする。
そう伝えようとしたら、彼女の瞳に光が戻って
きた様に見えた。


「忘れるなんてご無理をなさらないでください
ませ。
 殿下、私にお気遣いなく。
 姉の誕生日に殿下が姉を偲んでくださる事を
私は嬉しく思っているのです」

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