この胸が痛むのは
第97話 アシュフォードside
邸内に戻った俺達を迎えたのは、アーサーと俺が連れてきた護衛騎士。
護衛騎士はうつ向いていたので、アグネスは彼の方を見ていない。
「……殿下にお茶を差し上げて」
冷静な声でアーサーに、俺を応接室に通す様に
指示を出す。
アグネスはいつものアグネスに戻っていた。
「ゲイルは帰ってきたの?」
俺達が通り過ぎるのを、頭を下げて待っている
アーサーの前で立ち止まり、小さな声でアグネスが尋ねていた。
一番に彼女が気にしていたのは、ゲイルが戻ってきて、死人還りに協力してくれるか、なのだ。
アーサーが頭を下げたまま答えている。
「まだ、でございます」
「わかったわ」
それだけの短い返事に、アグネスの落胆が滲んでいた。
俺の前では隠そうと努力はしているように見えたが、表情は暗い。
妻の病院の付き添いだと言われれば、約束したのにと無理を言えないのがアグネスだ。
協力者が確保出来なくなって、どうするかの算段がつけられないのだろう。
おまけに邪魔な俺が邸内に居るなら、それに付き合わなくてはならないので、クラリスの部屋に
入れない。
最初は、死人還りを行う事でクラリスの死を乗り越えて、アグネスが気持ちを前に向けられるのなら、協力したいと思っていた。
先生には彼女のように、自らを暗示にかけてしまう人は危険だと注意されていた。
それでも、抱き締めて話をして、アグネス本人に届くように繰り返し呼びかけて……
そうすれば伝わると。
アグネスにそれは伝わると思っていて……
いや、思いたかった。
護衛騎士はうつ向いていたので、アグネスは彼の方を見ていない。
「……殿下にお茶を差し上げて」
冷静な声でアーサーに、俺を応接室に通す様に
指示を出す。
アグネスはいつものアグネスに戻っていた。
「ゲイルは帰ってきたの?」
俺達が通り過ぎるのを、頭を下げて待っている
アーサーの前で立ち止まり、小さな声でアグネスが尋ねていた。
一番に彼女が気にしていたのは、ゲイルが戻ってきて、死人還りに協力してくれるか、なのだ。
アーサーが頭を下げたまま答えている。
「まだ、でございます」
「わかったわ」
それだけの短い返事に、アグネスの落胆が滲んでいた。
俺の前では隠そうと努力はしているように見えたが、表情は暗い。
妻の病院の付き添いだと言われれば、約束したのにと無理を言えないのがアグネスだ。
協力者が確保出来なくなって、どうするかの算段がつけられないのだろう。
おまけに邪魔な俺が邸内に居るなら、それに付き合わなくてはならないので、クラリスの部屋に
入れない。
最初は、死人還りを行う事でクラリスの死を乗り越えて、アグネスが気持ちを前に向けられるのなら、協力したいと思っていた。
先生には彼女のように、自らを暗示にかけてしまう人は危険だと注意されていた。
それでも、抱き締めて話をして、アグネス本人に届くように繰り返し呼びかけて……
そうすれば伝わると。
アグネスにそれは伝わると思っていて……
いや、思いたかった。