この胸が痛むのは
去年の秋、ノイエには公爵閣下の病状を知らせた。
手紙を受け取った彼は逡巡した後、一時帰国して閣下を見舞った。
二度と会わないと言っていた曾祖父と曾孫は
2日間、当代の私室で語り合って、ノイエは
再び出国した。
その10日後にストロノーヴァ公爵は亡くなった。 

後を継いだ先生の父はイオンと呼ばれなくなる前に春先に流行った病に倒れられ……
祖父の跡目はいきなり一代飛ばして、先生に回ってきてしまったのだった。


当代、次代と続け様に亡くした先生と公爵家の
混乱ぶりは凄まじく、もちろんそれはトルラキアの王城内、派閥、社交界にも影響は大きくて、
未だに落ち着いてはいなかった。

俺の護衛を装って、先生は儀式を見守ろうとしていたので、ノイエにもそれを頼んでいた。
ノイエは先生の代わりに全て見て、報告する。

自分は決して巻き込まれず、何かあれば助けを
直ぐに呼びに行けるようにする事を、命じられていた。


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