この胸が痛むのは
……本当は自分でもわかっている、それは怯えていた言い訳なんだ。
無意識なのか故意なのか、わからないが。
アグネスからぶつけられた悪意。
彼女は幼い頃からの、抑制された性格からめったに表に出せなかったものを、別の人格の力を借りて俺にぶつけてきたのだ。
そんなアグネスが恐ろしくて、俺は。
……俺をずっと憎んでいたのかもしれない君の隣に居ることを放棄した。
鍵を回して部屋に入る。
中は光を遮る厚地のカーテンが閉じられて、灯りは二本立て燭台に立てられた蝋燭の2本の頼りない細い炎だけ。
9月上旬の午後だ。
外は小雨とは言え、カーテンまで閉めきって、
部屋はムッと熱気が籠っていると思っていたのに反して冷気を感じた。
身震いする程の。
セージを燃やすと、しばらくは煙からミントに近い清涼感のある香りがするのに、扉を閉じられていた部屋には何の香りも……
燻された煙の名残りも、そこにはなかった。
全て想定したものとは違っていた。
部屋の雰囲気は重く、直接絨毯の上に座り込んでいたアグネスがゆっくりと、闖入者である俺達の方を見た。
暗いので一緒に入室したのがノイエだと、判断は出来ていない筈だ。
無意識なのか故意なのか、わからないが。
アグネスからぶつけられた悪意。
彼女は幼い頃からの、抑制された性格からめったに表に出せなかったものを、別の人格の力を借りて俺にぶつけてきたのだ。
そんなアグネスが恐ろしくて、俺は。
……俺をずっと憎んでいたのかもしれない君の隣に居ることを放棄した。
鍵を回して部屋に入る。
中は光を遮る厚地のカーテンが閉じられて、灯りは二本立て燭台に立てられた蝋燭の2本の頼りない細い炎だけ。
9月上旬の午後だ。
外は小雨とは言え、カーテンまで閉めきって、
部屋はムッと熱気が籠っていると思っていたのに反して冷気を感じた。
身震いする程の。
セージを燃やすと、しばらくは煙からミントに近い清涼感のある香りがするのに、扉を閉じられていた部屋には何の香りも……
燻された煙の名残りも、そこにはなかった。
全て想定したものとは違っていた。
部屋の雰囲気は重く、直接絨毯の上に座り込んでいたアグネスがゆっくりと、闖入者である俺達の方を見た。
暗いので一緒に入室したのがノイエだと、判断は出来ていない筈だ。