この胸が痛むのは
「ただ、何?」

「アグネスには殿下から事情を話していただけ
ますか?
 私が何を言っても、今は信用してくれないと
思いますので」


夜会が終われば。
無事にあのクジラ王女が俺を諦めてくれたら。


「じゃあ、早速だけど、今日から3人でランチ
食べようか。
 仲良しアピールしないとな?」

レイが俺とクラリスの間に居てくれて助かった。



まだ不安は残っている。
『囲い込め』と、アライアは言ったが。
アグネスは俺をそんな対象に考えていないのに。
そんなことをしていいのか?
拒否される自分が想像出来る。
嫌だと泣かれても、俺はそれが出来るか?

俺の気持ちはフラフラしていて、不安はなくならない。
だが、今はそれよりも夜会の事を考えないと。
協力を承諾してくれたクラリスに傷ひとつ付けてはいけないのだ。


 ◇◇◇


先に侯爵宛にサイン入りの書状を書いた。

『第3王子の生誕記念夜会のパートナーに、
クラリス・スローン侯爵令嬢を望んでいる』
と、いう事にさせて欲しい


そう書いた。
勿論、サインはあのアグネスに貰ったペンを使う。

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