この胸が痛むのは
昼食はサラダ、スープ、小海老のグラタンに小さなプリンを付けてくれていました。
今夜の夕食は多分、姉が好きだったメニューから選んだものが食卓に並ぶことになるでしょう。
ほんやりとその様な事を考えていたら、今度は
頭痛がして。

 
ゲイルはいつ帰って来るのかしら?
朝から何度もアーサーに尋ねてしまって、変に
思われているかもしれない。
妻のマーサの調子が悪いと、朝一番に聞かされて。
『間に合う様には戻ります』と、言っていたのに。


イライラしてはいけない。
マーサの体調が悪いのだから。
季節の変わり目は体調を崩す人が多いし、きっと病院は混雑しているのだ。
私もどうしてなのか頭が痛くて、食欲もない。 


午後のお茶の時間まで眠ろうと、レニーを呼び
ました。
料理長に謝っておいて欲しいと、あまり手をつけられなかった昼食を下げて貰いました。
それから、デイドレスのままベッドの上で横に
なりましたが。


雨の日は嫌い。
あの日を思い出してしまうから。
皆で待っていたのに、帰らなかったお母様と
お姉様。

姉の部屋から持ち出したドレス。
自分の身に当てて、この部屋で、姿見の前で
くるくると回った。
このドレスで殿下と踊りたかった、と。

悔しくて邪な願いをしたあの日を思い出させる
9月の雨の午後…
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