この胸が痛むのは
頭痛は続いているのに、身体は天井まで浮き上がる程軽くて。
夢の中に居る様なこの感覚は、風邪でも引いたのかしら。
でも、今は薬は飲めない。

これからしようとする儀式に薬を飲んで臨むと、失敗する気がするから。
……臨むも何も協力してくる筈のゲイルが居ないのに。
やはり1人では無理なのかしら。


かつて、伝承民俗学クラブで行われた死人還りについてのミーティングを思い出そうとしていました。

『参加するのは2人以上、 これは絶対条件よ』

『部長、1人では無理なんですか?』

『形代を使うなら1人でも可能でしょうね。
 でも、依り童なら術を解く人が必要じゃない?』

姉に会いたいのなら、よく似た私が依り童になるしかない。
ゲイルが戻ってこられないのなら……
誰に頼めばいいの?

口が堅くて……レニーは駄目、いい子だけどおしゃべりだから。
アーサーは他には漏らさないだろうけれど、彼とふたりで部屋に籠るのは外聞が悪い。

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