この胸が痛むのは
必要な物は昨日の内に、運んでいました。
銀の燭台、銀のトレイ、赤い2本の蝋燭、乾燥
させたホワイトセージ、香草を燃やす為のお皿は調理場から分けて貰ったアワビの殻。

姉のデスクの上に、隠していたそれらを並べるとロレッタが『お金はお返し致しますので』と、
言い出しました。

『どうして?』彼女を怯えさせない為に微笑み
ながら、優しい声で尋ねました。


「よくない、よくないと思うんです」


『よくないと言われても、やるの。
 出来るだけ圧をかけないように』

また誰かが戻ってきて私に囁く。

『彼女を逃がしたら駄目』

うるさい、もぉ、本当にほっておいて!
段々細かく指導するようになってきた声に反発を覚えました。

『いいの?私が消えたら、また何も言えない
つまんない女だと思われるよ』

『たまーに、助けてあげるね』


その声を振り払おうと、私はロレッタに大した 役目じゃないと説明しました。
一瞬表情を歪めた彼女でしたが、この場からは
逃げられないと悟ったのか、早口に尋ねられま
した。
さっさと終わらせたいのでしょう。

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